2009年1月23日金曜日

憲法判例

三菱樹脂事件という、有名な最高裁判例があります。学生運動をしたことを申告しなかったことを理由に3ヶ月間の試用期間後本採用を取り消されたことを争った事件です。企業は学生に対して思想信条の申告を求める権利がある、と言いました。これを言ってしまった点で我が国の最高裁判例の中でみっともないものの一つになってしまいました。それ以外はかなりまともな内容なんですけど。問題はなぜ企業は学生に対して思想信条を申告させる権利を有する、と最高裁は言ってしまったのか、です。


受験生なら誰でも知っているはずの判例なんですが、恥ずかしながら第1審から最高裁まで全部の判旨をじっくり読んだのは今回が初めてです。



ローに入ってから分かったのですが、判例というのは裁判所が何も見ずに聞かずに一人で勝手に作る物ではなくて、原告と被告の主張の応酬の果てに出来上がった判断であり、その意味では当事者の応酬の仕方にずいぶんと左右されるものなんです。第一審からの当事者の主張反論、それに対して第一審裁判所がどう応えたか、を控訴審、最高裁と、順に作り上げていく、時間と労力をかけて出来上がるものなんです。しかもどちらも真剣に渡り合うので膨大な量の文章になります。それをちゃんと読むというのはとてもしんどい作業です。



おまけに最高裁は巧妙な理屈を立てますから、よくよく読まないとはぐらかされたり迷路に陥ったりします。ですからとても疲れます。



で、憲法も行政法もそういう判例づくしの科目なので、もう勘弁してくれと叫びたくなります。


さきほどの三菱樹脂事件は、内容的にはただの労働事件で、本来憲法問題にならないはずだったのです。


ところが前審の東京高裁が(すなわち高裁での当事者の争い方が憲法論にしてしまったためですが)憲法19条の思想信条の自由が学生にある、したがって思想信条を理由とする本採用拒否は憲法19条に反して無効だと言いました、というか、言っちゃってしまいました。


この高裁判決が虎のしっぽを踏んづけてしまったのです。


高裁判決をそのまま通してしまったら日本中の大企業は赤ヘルや共産党員の学生をいやでも雇わなければならなくなるからです。


その点第一審は、ただの解雇権濫用だ、とだけ判断したので、どういう場合に解雇権濫用になるかは個々具体的ケースにおいてあらゆる事情を総合して判断すれば良かったのです。そのさい学生が共産党員だったのか否かは従業員の資質とは関係ない、とさらりと言っておけばよかったのです。



それを東京高裁が大上段に構えて企業は学生の思想信条の自由を侵害してはならん、と大見得を切ってしまったのです。それで最高裁は、いやそうではない、と真逆のことを言わざるを得なくなってしまったのです。



そういう風に、裁判というものは生ものなんだ、決して論理必然に論点が出てくるという学問的なものではない、と言うことがよーく分かりました。



今日でその憲法の授業と、苦手な行政法の授業が終わりました。しかしこれからが大変です。試験対策が待って居るんです。後期だけで200個以上の判例を復習しなければならないでしょう。

 これから大寒波が押し寄せてくるそうで、きっとロー内も寒くなるでしょう。

仕方なく自宅でやらざるを得ないことになりそうです。




























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