2009年5月29日金曜日

短答式




2年ぶりにやると、悪夢を思い出していや~な気がしました。



旧司のときの焦りと絶望感と恐怖です。



来年またやってくるのかと思うと、今のうちに体験しておいて良かったです。



ほかの学生達も異口同音でした。



この文章は正しいか間違っているか、とだけ問われると、うむむむっと緊張します。文字通り白か黒か、なんで、一か八かです。直感を信じるだけでした。直感というのは、原則論と本件における例外の必要性との調和点を瞬時に判断すること、だと思います。要するに自分の持っている調和点が条文判例と同じかずれているか、ということでしょう。



答合わせは未だしておりません。1週間くらい経ってからおそるおそるやります。



昨日福岡高裁で、危険運転致死傷罪で若くて愚かでズルイ福岡市職員が懲役20年の実刑判決を言い渡されました。このバカ者は大量に飲酒した上で猛スピードで大型車を走らせ被害者家族が乗っていたランドクルーザーかパジェロかという頑丈なクルマに追突し、その弾みで重いクルマはゆっくりと橋から冷たく暗い博多湾に落下していったのです。



結果的に幼い三人の子が亡くなりました。お母さんとお父さんは懸命にわが子らを真っ暗な海に潜って何度も何度も探しだしましたが、手遅れでした。



加害者のバカ者は逃げました。そして平然と自分の犯行を隠蔽しようとしました。飲酒運転がばれるのが恐くて大量の水を飲もうと、ケータイで友人に水を持ってこさせたのです。



第一審判決は業務上過失致死で懲役7年半。世間は怒りました。けれど、福岡地裁の言い分は、これはタダのよそ見運転にすぎない、と。飲酒したから危険運転になるというわけではない、と。



これに対し福岡高裁は危険運転致死傷罪が成立すると判断しました。つまり、タダのよそ見運転ではない、故意に危険な運転をしたんだ、と認定しました。



わたしが感嘆したのはその根拠でした。高裁判決はつぎのように言いました。



この道は左に傾いている。だから単によそ見運転だけだったらクルマは自然と道路の左端に寄って歩道に乗り上げるはずだ。なのにこいつはまっすぐにクルマを走らせていた。と言うことはこいつは決してよそ見運転なんかしていなかったのだ、と。自分の意志でまっすぐに走ったのだ、それも猛烈なスピードを出して。


、、、、っと、すみません。長くなりそうなので、以下は朝日新聞ネットからもらってきたのを転載します。


あー、これって盗用じゃないの?とお思いでしょうが、こういう判例を纏めてダイジェストにしているのは実は裁判所なんです。新聞社の記者にはこのような腕前はありません。予め裁判所が作っておいて新聞各社に渡しているのです。現に不特定多数の裁判官から聞きました。ですからむしろ新聞社こそちゃんとこの裁判内容のまとめは裁判所からもらいました、と断ってから新聞に載せるべきなんです。


そうそう、本題はこっちでした。この高裁判決の素晴らしいところは、探偵のように事実を注意深く丁寧に探求したところです。まあ、検察官、警察の丹念で地道な捜査の賜物なんですけど。次の朝日の抜粋の中の赤字部分です。




福岡市東区で06年、飲酒運転で3児を死亡させたとして危険運転致死傷罪などに問われた元同市職員、今林大(ふとし)被告(24)の控訴審判決が15日、福岡高裁であった。陶山博生裁判長は、業務上過失致死傷罪の適用にとどめて懲役7年6カ月(求刑懲役25年)を言い渡した一審・福岡地裁判決を破棄。「酒の影響で正常な運転が困難な状態で事故を起こしたと認められる」として危険運転致死傷罪と道交法違反(ひき逃げ)の罪を適用し、懲役20年を言い渡した。弁護側は判決を不服として、上告する方針。
 01年の刑法改正で施行された危険運転致死傷罪の適用の可否については、一、二審で裁判所の判断が分かれるケースが相次いでいる。
 判決は、危険運転の要件となる「正常な運転が困難な状態」とは、「現実に道路・交通状況に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態にあることだ」として、一審と同じ判断の枠組みを維持した。しかし、事故原因は脇見運転だったとする一審の事実認定を否定して、正反対の結論を導いた。
 判決はまず、一審判決が事故原因を脇見運転とした点について検討。現場の道路が左側が下がっていることから、直進するためには絶えずハンドルを右側に微調整する必要があり長い脇見は不可能だと指摘。事故原因を11.4~12.7秒にわたる脇見とした一審判決の認定は誤っているとした。
 そのうえで「被告は先行車の存在を間近に迫るまで認識できない状態にあり、道路と交通の状況などに応じた運転操作を行えなかった」と指摘。アルコールの影響で正常な運転が困難な状態で事故を起こしたとして、危険運転致死傷罪の成立を認めた。量刑の理由で陶山裁判長は「相当量の飲酒をしたうえ、一般道を時速約100キロで走行した行為は危険。結果は誠に重大で、厳しい被害感情ももっとも」などと述べた。
 弁護側は、事故は被告、被害者ともに「不意打ち」だったと主張。被告の脇見運転だけでなく、被害者の居眠り運転や急ブレーキなどの過失が重なって被害が拡大したと訴え、無罪か大幅な減刑を求めていた。しかし判決は、道路の状況などから「(被害者側が)居眠り運転をしていたとは考えられない」と退けた。
 一審の福岡地裁は、危険運転致死傷罪のほかに業務上過失致死傷罪を起訴罪名に追加するよう検察側に命令。08年1月、業務上過失致死傷と道交法違反(ひき逃げ、酒気帯び運転)の組み合わせでは最高刑に当たる懲役7年6カ月を言い渡していた。




これぞ刑事裁判だ、と思いました。真実は現場にある、のです。出来の悪い法律の解釈ばかりに目を奪われて、肝心の事実を探ろうとしなかった第一審裁判は多いに非難されるべきです。


ただ、イマイチよくわかりにくそうなので、不肖わたしが解説します。


第一審は、うっかり運転、前方不注意運転に当たる、だからちゃんと前を見ずに運転したところに過失はある、けど、それ以外ない、わざと危ない運転をするつもりで走らせていたのではない、と判断しました。


これに対し、第二審は、そうではない、被告人はちゃんと前を見て運転してたんだ、さもないと道路が左に傾いているのだからよそ見しながら運転してたんなら自然とクルマも左の歩道に乗り上げていたはずだ、なのに被告人は道路をまっすぐに走らせている。これはよそ見運転をしていなかった証拠だ。


被告人は意図的に、つまり分かっていながら大量に酒を飲んで猛スピードを出して直線道路をまっすぐ走らせている。そんな自分が危ない運転をしていることには十分気づいていたはずだ。だから危険運転をする意思があったのだ、と。


もっともなことだと思います。


彼の悪質性は事故後の隠蔽工作によく表れています。




日大の板倉教授は、重すぎると言ってます。人を殺しても10年なのに、殺す意思がないのに20年の懲役となるのは重すぎる、と。


支持できません。人を殺したのにたった10年の懲役にしかならない方がオカシイのです。もちろん、犯人の情状などを総合考慮した上で軽くしたのでしょう。つまり、殺人で10年というのは特例であってそれを比較の対象にするべきではない、と言いたいのです。
今夜1時、外の気温は19度。寒いです、マジで。
こういう時のお風呂と、布団に潜り込むとき、って極楽です。
明日は朝から夕方まで要件事実漬け。また必ず当たります。で、中山先生から、フフフッと笑われてしまうのです。この笑いがコワイのです。