2009年5月20日水曜日

明日から裁判インコ開始

裁判員制度について、みなさんはどうお考えでしょう。わたしははっきり言って反対です。その理由は、①裁判員という素人が刑事裁判の、しかも重大犯罪に関与することについての能力の問題の他に、②公判前整理手続という制度が気に入らないからです。
 まず①について、素人がいきなり殺人だとか強盗強姦殺人なんかの事件の陰惨で凄惨な犯行現場やら被害者の遺体なんかの写真を見せられて正常な判断が出来るだろうか、極めて疑問です。裁判にも素人的判断が必要だだなんて言ってますが、素人は重大犯罪に遭遇するなんて一生に一度あるかどうかなんですから、そんな滅多にお目に掛からない異常な行為について素人的判断なんてのが出来うるのか、ごく普通のおじさんおばさんたちに、お前が殺したんだ、と目の前の人間を弾劾することができますか。
②しかし最も危険なのはこちらです。5日間くらいで集中的に審理をして判決まで出す、と言うことだけ見るといかにもスピーディで大変結構な制度のように見えます。でも素人が5日間で判決まで出せる、なんてあり得る話でしょうか?
これにはカラクリがあるんです。裁判員さんたちは旅館に泊まるお客さんにすぎないんです。体一つで旅館に行けばちゃーんと部屋と料理がお膳に並べられている。客さんは自分たちの目の前に並べられた料理をただ座って食べるだけなんです。
材料の調達、調理、盛りつけ、配膳、それらは全て専門家である裁判官、検察官、弁護人達が非公開でチャチャチャッと事前にやってしまっているのです。
ですから裁判員達は決して生の事件を見ているのではありません。専門家達が、これがあなた方が味わう生の事件ですよ、なんて言いながら予め調理済みのものを生の事件だとして食べさせられるだけなんです。しかも食べやすいように調理されてしまっているので、かえって真実から遠くなるという危険性が増大します。
 裁判所は、審理の迅速化のためには整理が必要だと言います。けれども今までは二人証人尋問できたものがこれからは一人で十分だ、と『公判前に整理』されてしまう結果、被告人の防御の保障も弱くなるのです。
 ふつーに考えても、今まで何ヶ月もかかっていた審理が急に5日間で判決まで出るなんて、どう考えてもオカシイとおもいませんか。
 わたしの対案は、裁判官を倍増することです。いや、三倍増です。弁護士も検事も増員させます。そしたら各一人当たりの担当事件の負担も減り、それこそ迅速で集中的な審理が、しかもじっくりと審理できるのです。費用は、そうですねえ、自衛隊のF163機分くらいですか。安いもんです。

もっとも、裁判員制度にはメリットもあります。国民が裁判に主体的に参加することは民主主義発展のため(国民の意識向上)には良いことだからです。
 でも、ですよ。だったら今の裁判所の傍聴席は満員ですか?和歌山毒カレー事件とかホリエモンなんかの有名な事件以外、ほとんど場末の映画館じゃないですか。市民の司法への参加を言うのだったら、まず傍聴席を満員にすること、さもなければ法廷をテレビ中継することから始めるべきです。それだけで国民の司法参加効果は格段に上がります。 もっと言わせていただくなら、小中高の必修課外授業にすればよいじゃないですか、傍聴を。そういう増員とか傍聴教育もしないでいきなりおまえは明日から裁判員だ、だなんて急に言われて、はいそうですか、と言えますでしょうか。国民をバカにしてるんじゃないでしょうか。仕事をほっぽらかして裁判所に来いと命令してるんですよ。
 まったく、机上の空論、地に足が着いていない出来損ないのヒドイ制度です。
早晩裁判員制度は換骨奪胎されて形骸化すると思います。日本でもかつて大正時代にはアメリカと同じ陪審員制度があったのですよ。でも使われなくなってしまいました。同じ轍を踏むことになると思います。

 みなさんはどうお考えでしょうか。