三橋三智也の、岩手の和尚さん、と言う歌がありました。
お~さむこさむ、山から小僧が下りてきた~
という歌です。
今朝はほんとに寒くて、ジャンパーの上からさらにウィンドブレーカーまで羽織ってバイクに乗りました。
ローに着くと、鼻水がずるずると出っぱなし。どうも風邪の引き初めみたいです。
それでも明日の刑訴が別件逮捕勾留という厄介な箇所で、判例をいくつも読まねばならず、鼻にティッシュを詰め込んで読んでました。
と、なにやら背広のおっさん達の集団がうろうろしてます。なんだろうと見てみると、どうも評価委員会という、全国のローをチェックする集団のようでした。
院長が緊張の面持ちで案内してました。
学修室の中にも入ってきて、委員の一人が、わたしの席をのぞき込んできました。ちょうど刑訴の判例と格闘していたところで、このローにいるおっさん学生はまじめに勉強しとるなあ、と思ってくれたら好都合。いつものように爆睡してなくて良かった良かった。
別件逮捕勾留の論点については、本件基準説も別件基準説もどっちもオカシイと思います。以下自説を言わせてもらいます。
まず、別件基準説は、言わずもがなの説で、別件逮捕勾留が違法になる場合とは別件での逮捕勾留自体が要件を欠くときしかありえません。ですから、そう言う場合が違法になるのは当然であり、別件逮捕を抑制する手だてにはなりえません。むしろそれを狙った説とも言えます。
かといって本件基準説も、まだ始まってもいない違法取り調べについて、捜査官が別件で逮捕してそれを本件の取り調べに利用しようとしたのだという、内心の意図を取り上げようとしており、いわば通貨偽造罪の行使の目的みたいなものですが、それを明らかにすることは到底無理です。
狡猾な捜査官はそんなそぶりは見せっこないからです。ばればれの場合しか抑制できません。
ではどのように考えればよいか。わたしが前々から思っていたのは、逮捕勾留って何のためにあるのか、から考えなければならない、ということです。
もちろん、逃亡防止、証拠隠滅防止です。それに尽きるのであって、取り調べのためではありえません。
言い換えれば取り調べのために逮捕してはならない、ということです。
ただ、身柄拘束中の被疑者には、取り調べ受忍義務があります(通説)。そしてこれこそが本質的な問題なのだと思います。
というのは、この取り調べ受忍義務を肯定するか否定するか、肯定するとしてその中身は何か、によって別件逮捕勾留の理解が全く変わってしまうからです。
わたしは、取り調べ受忍義務とは、取調室への出頭滞留義務のことであり、そそれに尽きるのであって、捜査官の尋問に答える義務まではない、という説を支持します。198条を素直に読むとそう解するしかないからです。また、黙秘権がある以上、捜査官の尋問に答える義務は全くないからです。
したがって、取り調べ受忍義務とは、取調室に行かされる義務、そこに止まっていなければならない義務、のことだけであり、その取調室で寝ても良いし、雑談しても良い、黙秘は当然できる、そういうその場に居る義務のことを言う、ということです。
なぜなら被疑者はすでに身柄を拘束されているから、その拘束場所が変わったらその変わった場所にいなければならないのは当然だからです。
もっとも、取調室で無理矢理供述を取ろうとしかねない危険はあります。
本件基準説や、余罪取り調べの可否についての事件単位説はその危険を避けようとするために主張された説です。
けれども、そのような無理矢理供述をとろうとする危険を防止するために本件基準説を採ったり事件単位説を採ったりするやり方は、なんかずれているような気がします。
すなわち、例えば重い殺人の取り調べのために、軽い窃盗(という別件)で逮捕勾留して、その別件逮捕勾留を利用して被疑者を殺人で取り調べた、という典型的なケースにおいて、本件基準説は、殺人で逮捕しようとして窃盗を持ち出した点が裁判官を騙した、つまり令状主義に反する、と言います。
けれども、そこでいうところの『殺人で取り調べた』の中身こそが重要なのです。つまり、被疑者と和やかにお話をするような取り調べなら、何罪について取り調べてもちっともかまいません。逆に、『このやろー、吐けーっ』と机をたたいたりして威圧するやり方は、たとえ逮捕された被疑事実についてであっても絶対に許されません。
そうだとすると、結局、問題となるのは取り調べの態様、程度だけです。何罪についての取り調べなのか、は逮捕勾留とは全く関係ありません。
さっき述べたように、逮捕勾留と取り調べとは因果的関係はないからです。
無論、戦前は取り調べて自白を得るために逮捕してました。けど今じゃ取り調べのために逮捕することはそれ自体違法なんです。
結局、わたしの採る説は、被疑者の取り調べはどこまで許されるか、だけに尽きると言う説です。しかもその中でも、事件単位説を使わない説です。
要するに、黙秘権を侵害するような取り調べだったか否かだけが問題になります。
ですから、窃盗で逮捕することも、窃盗の逮捕要件が備わっていればOKであり、逮捕後被疑者を取調室まで強制的に連れてくることはできる、その意味での出頭滞留義務はあるから、無理矢理取調室に来させられる、けど、その部屋では強制的な尋問はできない、黙秘権があるから。しかし強制的な尋問でないならそこで何を聞こうが制約は無い、だって捜査官の質問に答えるか否かは任意だから。ゆえに、窃盗で逮捕されて、取調室で殺人について聞いても違法な捜査ではない、だって任意だから。違法となるのは、無理矢理供述を強制するような取り調べだけであり、そのような強制は窃盗についてなされようが殺人についてなされようが変わりはない。
と言うのがわたしの考えです。
ついでに言うと、身柄拘束を受けた被疑者は取り調べ受忍義務があります。
ここで大事なのは、この時系列です。身柄を拘束された時の効果として、法は取り調べ受忍義務を規定しています。ここが大事な点ですが、取り調べは身柄拘束から出てくる効果であって、身柄拘束の目的ではない、ということです。
ですから、取り調べを目的として身柄拘束をするということを法は全く認めておりません。
どうでしょう?
ご意見をお待ちしております。
そうそう、今日いいことを思いついたのです。個人的にコメントなさりたい方がもしもいらっしゃったら、と思い、ヤフーメールのアドレスを載せときますから、そちらも使ってください。
bbywn780@yahoo.co.jp
明日朝早めにローに行って訴状を書かねば。難問で悶絶しております。