2008年5月19日月曜日

商法

甲会社と乙会社が業務提携をすることになりました。
まずは人的交流からはじめることに。
甲社の代取Aが乙社の非常勤監査役を兼任、
同じく甲社の専務取締役Bが乙社の代取に就任
逆に
乙社の代取Cが甲社の社外取締役に就任

そこで問題です。
①乙が丙銀行から借金していたのを甲が債務保証することにしました。
②甲と乙は多額の契約を結ぶことにしました。

①②それぞれの場合、取締役会の決議が必要でしょうか。

たった今書き終わりました。やれやれです。夜中の12時半。
また始まるのですか、一週間が。あああぁぁぁぁぁぁ、、、、

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

どうも,朝からエキサイティングな問題をありがとうございます。寝ぼけ頭が目をさまします。
さて、早速本論にはいります。①の債務保証の問題です。利益相反取引に当たるかどうかです。この場合、対象はCでしょう。Cが甲の取締役会の承認を得る必要があるか。そこで、まずはそもそもこの債務保証が利益相反行為に当たるかです。この債務が乙会社の債務であって、C個人の債務でない点が問題となると思います。法文では「会社と当該取締役との利益がそう反する」とあるので、この要件を満たさないのではということである。そこで、Cとの関係では利益相反ではないともいえなくないです。しかし、そもそも、この利益相反行為に取締役会の承認を要求した趣旨は、一人の取締役が双方の当事者に関与することによって、当事者の一方(本件では甲)の利益が害されるおそれがあるので、それを未然に回避することを趣旨とします。その趣旨よりすると、債務保証の対象が乙の丙に対する債務であっても、それを保証することによる甲のリスクは同じことです。よって、客観的に利益相反行為に該当するとはいえます。しかし、それだけで、法の要件がみたされるわけではありません。このCは甲会社においての身分が平取のようですから、甲社の行為に決定権はないのではとも思われる。法文上は「取締役」とのみありますが、平取まで含むかですが、結論として含むとすべきです。というのも、他の取締役が代表するときも会社利益を害する危険はあるからです。
というわけで、Cは甲会社の取締役会の承認が必要と思われる。
②のほうについては時間がないので結論のみですが、これについては「多額の契約」が「取引」に該当するか不明な点はありますが、該当するとして、BCは甲の承認が必要ではと思います。

以上、確信はありません。あんみつさんの見解を待っています。

あんみつ さんのコメント...

第1 保証契約について
1,甲会社、乙会社いずれも公開会社であるから取締役会を置かなければならない(327条1項1号)。
 そして、取締役が利益相反取引を行う場合、予め取締役会の承認決議を要する(356条1項2号3号、356条1項柱書の「株主総会」は取締役会設置会社においては「取締役会」と読み替える(365条))。
 そこでまず本件保証契約が利益相反行為(356条1項2号3号)にあたるとして取締役会承認決議を要するかが問題となる。
(1)Aについて
 (ⅰ)債務保証をすることとなれば甲社に不利益、他方相手方乙社には利益となる。ところが乙社には甲社の取締役Aが非常勤監査役として兼任している。そこでこの債務保証は2号の直接取引に当たり、甲社取締役会の承認決議が必要なのではないか、が問題となる。
 直接取引となるための要件は①取締役が②自己又は第三者のために、③取引をしたことである。
 まず①は充たす。
 では②乙社は第三者か、「第三者のために」とは第三者名義を指す。なぜなら例えば120条は「計算において」と規定しており、ここから会社法は「ために」の意義については通常通り名義と捉えていると解されるからである。また、本条項3号で間接取引についても規制しているので狭く解しても不当に利益相反行為の範囲を限定しすぎることはないからである。
 とすると監査役には会社代表権が無いからAは乙社名義では取引し得ず、②の要件欠く。
よって356条1項2号の直接取引には該当しない。
 (ⅱ)そうだとしても同条項3号の間接取引に当たらないか、が更に問題となる。
間接取引に当たるための要件は、①会社が②取締役以外の者との間で③会社と取締役との利益が相反する取引をしようとするとき、である。
①、②の要件は充たす。
では③はどうか。ここに「利益」の意義が問題となる。会社法が利益相反行為を規制したのは、会社に対して忠実義務(355条)を負っている取締役が、忠実義務に反して取締役として有する会社に対する強い影響力を利用し、会社の不利益において自己の利益を図ることを防止することにある。そうだとすれば、利益とは経済的利益を指すと解する。
 しかし、自己の経済的な利益を会社の不利益において得ること全てを含むとすると、取締役会決議を欠く利益相反行為の効果は相対的無効とされているので、取引の安全を害する。それゆえ何処までが間接取引に当たるのか、取引安全のため明確にする必要がある。そこで会社財産保護と取引安全の調和の見地から、「利益」とは当該取引によって直接に取締役が経済的利益を得ることとなるものをいう、と解する。
 本問では当該保証契約によって非常勤監査役Aが得る利益は乙社が有利となる保証契約を締結する結果、乙社内での立場が有利になるくらいであり、間接的なものにすぎない。よって直接に経済的利益を得ていないといえるから、③の要件を欠く。
 よって以上より間接取引にもあたらない。
(ⅲ)以上から Aについては取締役会の承認決議は甲、乙両社においても不要である。
(2)、Bについて
甲社の専務取締役Bは乙社の代表取締役に就任しているが、甲社の専務取締役を辞任しているのか兼任しているのか不明である。そこで分けて検討する。
(ⅰ)兼任の場合
 ①甲社の取締役Bは、乙社の代表取締役でもあるから、乙社代表権を有するので(349条1項)、②第三者乙社のために③保証契約という取引をしたことにあたる。
よって直接取引にあたり、甲社取締役会の承認決議が必要となる。
(ⅱ)兼任していない場合、
①の要件を欠く、よって原則として利益相反行為にならない。
しかし、甲社取締役を辞任したのが名目的であるなら、脱法行為にあたる。これは356の趣旨を没却するのでなお利益相反行為にあたるとすべきである。よって兼任していない場合も同様に甲社の取締役会の承認決議を要する。
(3),Cについて
(ⅰ)兼任している場合
乙社代表取締役Cは甲社の社外取締役も兼任しているとすると、甲社取締役が乙社という第三者のために③取引をしたことになるから、直接取引にあたる。
よって甲社の取締役会承認決議を要する。
もっともCは社外取締役にすぎないから甲社の業務執行を現実に行えないのではないかとも思える。しかし、利益相反行為の規制は忠実義務の現れであるところ、社外取締役も会社の業務執行権限を行使する取締役会の構成員であり会社に対して忠実義務を負っているし、社外取締役といえども業務執行権を有している。
よって社外取締役であることは結論に影響しない。
(ⅲ)兼任していない場合
上述のように、原則として利益相反行為にあたらない、が、名目上辞任したに過ぎないときは利益相反取引規制の脱法行為にあたり、なお取締役会承認決議を要する。
2,次にこの保証債務が多額の借財にあたるとして362条4項各号の承認決議を要するか、が問題となる。
多額とは、代表取締役に専決させることが会社全体の財産的基礎を脅かすこととなる数額であるため慎重を期す必要のある額を言い、具体的には会社の規模、業務内容によって決せられる。
本問の甲乙いずれも大会社公開会社だから10億円という額自体は必ずしも多額とはいえない、しかしそれだけの額を債務保証することは日常的取引には当たらない、特別な行為といえ、慎重な決定によるべきである。ゆえに多額に当たり、甲社の取締役会の承認決議を要する。
第2 高額の建物施工契約について
1,利益相反行為となるか
(1)不相当に代金が低額であった場合
 業務提携目的での契約であるから、建設工事の対価として通常考えられる代金額と異なる価額の設定も可能である。しかしそれを逸脱して不相当に低額な代金を設定したとき、甲社の不利益のもとに、乙社に利益が生ずる。
 ABCのうち、BCは、甲社の取締役で乙社を代表しており、乙社のために直接取引をしたといえる。
よってBCの行為は利益相反行為に当たり、甲社取締役会の承認決議を要する(356条1項2号)。
(2)逆に不相当に代金が高額であった場合
 乙社の不利益のもとに、甲社に利益が生ずる。そうだとすると乙社の取締役会承認決議を要するのではないか、との疑問が生ずる。
 しかし、ABCのうちで乙社の取締役で甲社のために甲社を代表する者はいない。
よって 利益相反行為とならない。
2,では重要な財産の処分(362条4項1号)にあたるか。
 この施設建築契約の代金は高額であるから、取締役会による慎重な意思決定が要求される。その分迅速な判断を旨とする代表取締役単独での決定の要求は後退する。
しかもこの契約は甲社乙社いずれにとっても高額である。よって両社の取締役会の承認決議を要する。


以上

匿名 さんのコメント...

早速にコメントありがとう。
さて、本題に入らせていただきます。私も頭の整理ができていないのでポイントだけ質問させてもらいます。
債務保証のほうですが、ここにきて「直接取引」と「間接取引」の概念に混乱をきたしております。間接取引については356条3項が規定していると思うのですが。追加説明願えると幸いです。それと、Aについてですが監査役という設定でしたので利益相反取引の規制対象ではないだろうということで割愛しました。おそらく出題者も結論としてはそうであろうと推察します。問題はその論拠かと推察します。おそらく出題者はそれを狙っていたのでしょう。そこで、そもそも356条の規制対象なのかという点がひっかかったのです。条文上では会社取引に絡む地位にいる者が対象になっていると読めます。とすると、そもそも監査役はその地位にないので、取引形態が直接取引か間接取引かという次元で監査役を除外する必要もないのではと思った次第です。この点についてコメントもらえると幸いです。
最後に多額の契約に関するBCについてですが、これについては甲のみならず乙からも承認が必要ですね。うっかりしていました。まあ、時間がなかったということで突っ込みはご容赦願います。

あんみつ さんのコメント...

間接取引の具体例、
金貸しZがP社の取締役Xにお金を貸しました。
P社はそのXの借金債務の連帯保証人になる契約を金貸しZと結ぼうとしています。P社の代取はYです。
この場合、356条1項3号の『①会社(P社)が、②取締役以外の者(Z)の者との間において③会社(P社)と当該取締役(X)との利益が相反する取引をしようとするとき』に当たります。なぜならP社がこの連帯保証契約を締結すると、間接的にP社に不利、借り主Xに有利となり利益が相反するからです。
かかる場合にP社取締役会で承認決議を求めるのは取締役Xではなく、代取Yです。なんでかというと、条文通りだからです。つまり、この例のような連帯保証契約という利益相反行為を取り結ぼうとしている契約当事者はZとP社です。ですから、P社がそのような利益相反取引をしてよいかどうかについて、P社内の取締役会で承認を経なければなりません。そして取締役会で会社の承認という意思決定を形成すべき責任者は取締役会招集権者Yです。Xはむしろこの取締役会承認決議の対象ですから特別利害関係人となります。したがってXは取締役会に出席することもできません。
まとめますと、間接取引で相手方と取引するのはP会社本人です。ですからP社内部で利益相反の承認決議が為されなければならないわけです。Xと取引をするわけではありません。XはZP間の契約によって甘い汁を吸うだけです。

Aが監査役に就任した場合、たしかに鳥取さんの仰るとおり、別に利益相反行為の問題はなさそうにも思えます。
 けれども、ひるがえって、なぜ問題ないのか、と考えてみると、監査役は「第三者のために」行為できない、つまり会社代表権を持たないからですが、その発想の前提には「第三者のために」というのは第三者を代表して、と言う意味である、つまり「ために」は第三者名義をいうのだ、計算を指すのではない、という発想があるからです。
ですから、そういうところを書く必要があるのではないでしょうか。
 また、先生は、新司の答案は長く書くことが必要だ、そして、イメージとしては自動車学校の敷地内でのバカ丁寧な左右確認とか一旦停止ラインを厳守するとか、超ゆったりした運転のような答案を書け、プロのような端折った答案は書くな、と指導します。ですから、答案は各要件をいちいち吟味した形式をとれ、と指示します。
そういうわけで、当たり前、という気持ちを捨てて、丁寧に書くこととなりました。