2009年1月28日水曜日

答案













みんなで民法の問題の答案作りを分担してやりました。その後二人で(相方はもちろん男です)みんなの書いた答案を検討するゼミをやっています。自分の書いた答案のアラは自分ではなかなか気付きませんが、他人が書いた答案は不思議とアラがすぐ見えます。なんででしょう。






今日の刑訴、予想どおり当たったのですが、超簡単な質問でした。2秒で言い終わることができる、ショートアンサー、しかも答えがテキストに載っているという馬鹿みたいな質問でした。授業後、前に座っていた学生から冗談半分嫌味を言われるくらいでした。






その後の民事弁護では不法行為の被害者の貰う逸失利益に関する判例を15個、先生がどんどん当てて聞きまくりました。幸いわたしは当たりませんでしたが、当てられた学生は全員完璧に答えていました。スゴイ、と思いました。












いろいろな面白い判例があります。たとえば、交通事故の被害者がむち打ち症にかかったのですが、損害賠償を請求したところ、加害者がこう言うのです『むち打ち症になったのは被害者が異常に首が長いからだ、だから被害者にも(首が長いという意味で)落ち度がある、だから過失相殺して賠償額を減らすべきだ』と。最高裁はもちろんはねつけました。






 また、夫婦が乗った乗用車が交通事故を起こし、対向車の運転手と夫婦の車を運転していた夫の両方に過失があった場合、助手席に乗っていてけがをした妻が対向車の運転手に損害賠償を請求した場合、夫の過失を取り入れて夫の過失は妻の過失と同じだとして過失相殺を認めました。理由は、夫婦は財布が一緒だから、です。






 若干引っかかる判例もあります。4歳の男の子が交通事故で亡くなりました。その子の親は、子供が67歳まで働いたら得ることができたであろう収入(これを逸失利益といいます)をまずその子自身が損害賠償請求権として取得し、その請求権を親が相続します。






 問題となったのは、親にとってはその子が亡くなってしまった以上その子を養育するために必要な費用(養育費)はもはや支出する必要がなくなったのだから、その支出分は損益相殺すべきだ、との加害者側の主張が認められるか、です。
最高裁はこれを認めませんでした。たとえばその子の逸失利益が3億円だったとします。その子が67歳まで働いたら獲得できたであろう利益が3億円ということです。その額から、その子自身が成人後67歳まで支出するであろう生活費(食費や住居費など、仮に1億円とします)はさっぴきます。この時点で3-1=2億円残ります。では親がその子が独立するまでの養育にかけたであろう養育費(子供の生活費や授業料学費など、仮に5千万円とします)も更に差し引くべきか、2億ー5千万=1億5千万円に減らされるのか、です。






最高裁は、このような子の養育費は差し引かない、としました。難しい言い方をすると、利得と損失とに同質性がないから、と言いました。ぶっちゃけて言うと、親にとって子供を養育するのは費用なんかではなくてむしろ喜びなのであり、加害者はそういう、子供を養育する喜びを親から奪ったのだ、だから5千万円の支出が防げたのではなくて5千万円出して子供を育てる喜びが失われたのだ、と言いました。 これには反対する学者が結構います。






 と、こんな感じの授業を延々とやってきたわけであります。












写真は昨日の遺棄罪のテキスト(白鳥祐司北大教授)から抜粋しました。






白鳥先生は無罪説です。






今日学食で食べてたら東欧風美人が一人で器用にラーメンを食べていました。カッコ良かったです。






2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

 前回の芙蓉さんのコメントを興味を持って読ませてもらいました。「二十四の瞳」を思いだし「冒険をしましょう!と、失敗を恐れずに、」いい言葉ですね。感動しました。
 法律を知らない人に上手に解説できるあんみつさん、さすがです。とても分かりやすい解説でした。

あんみつ さんのコメント...

はまやんさん、コメントありがとうございます。
芙蓉さんのコメントのお返しを書き始めたら途中から止まらなくなってしまいました。
なかなか難しいです。この択一的認定の授業用の予習に2日かかりました。どの本を読んでもイマイチ納得できないんです。特に学者の書いた本はひどいと思います。世間を納得させることができないような屁理屈ばかりで、しかもわかりやすく書こうという意識が欠如しているんです。
ローに入って痛感するのは、実務家の書いた文章のほうが格段にわかりやすいということです。実践的だからでしょう。試験も実践的というかより実戦的ですから学者の本はもういい加減にしてくれ、という気になります。
内田民法くらいでしょうか、読めるのは。